Oligometastasesは、1-5個以内の再発・転移がんに局所療法(手術, 放射線療法, ラジオ波 (RFA) など)を 全身療法の有無にかかわらず加えた治療方法も加味した がんの概念です。2020年度から、「オリゴ転移(正確には、Oligo-recurrence(後述))では、5個以内の場合には定位放射線治療(SRTやSRS)が保険適用」となっています。
Oligometastasesについては、日本で最初にこの状態に実体験もふまえ気付き、学会発表、論文化をはじめたのは当研究所代表の新部です(Oligometastases の パイオニア)。2006年には、それまでの研究の実績が評価され、(公財)放射線影響協会 から 第1回 放射線影響研究奨励賞を 「癌の oligometastasesおよびoligo-recurrenceに対する局所療法としての放射線治療に関する研究」で受賞もしています。これは、若手の放射線研究者の登竜門(放射線研究者の芥川賞と別名言われています)とされる賞に位置付けられています。一方、臨床医向けには、同様の賞が、(公社)日本放射線腫瘍学会 梅垣賞(放射線研究者の直木賞といわれています)があります。新部も2004年に受賞しています。
Oligometastasesを考える上で重要なのが、Oligo-recurrence(Oligorecurrence:オリゴリカランス)とSync-oligometastases(シンクオリゴメタスタシス)です。前者は、がんの原発巣が制御された状態(活動性でない状態:その部分の がん は抑えられている)で、後者は、がんの原発巣が制御されていない状態(活動性である状態:その部分の がん は抑えられていない)ということが大きな違いです。なお、Sync-oligometastases(シンクオリゴメタスタシス)の場合でも、原発巣に根治的な局所治療は施行します。
なお、Oligo-recurrence(Oligorecurrence:オリゴリカランス)については、当研究所の代表の新部らが、2006年に世界で初めて提唱をした がんの概念です 1) 2) 3)。Sync-oligometastases(シンクオリゴメタスタシス)は、2012年にこれも世界で初めて新部らが提唱した がんの概念です 4)。Oligo-recurrence(Oligorecurrence:オリゴリカランス)の方が予後が良いと報告されていますので 5)、再発・転移がん診療にとって とても重要な分類となります。また、Sync-oligometastasesを提唱した総説論文中で、Oligometastasesの個数を1-5個と定義しました。この総説論文は、全米No.1 がんセンターの評価を得ている MD Anderson Cancer Center の Joe Y. Chang 教授(テニュア)と共著で書き上げています 4)。

1) Niibe Y, Kazumoto T, Toita T, Oguchi M et al. Gynecol Oncol 103: 435-438, 2006.
2) Niibe Y, Kenjo M, Kazumoto T, Oguchi M et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys 66: 1366-1369, 2006.
3) Niibe Y, Hayakawa K. Jpn J Clin Oncol 40: 107-111, 2010.
4) Niibe Y, Chang JY. Pulm Med 2012: 261096, 2012.
5) Niibe Y, Yamamoto T, Onishi H, Jingu K et al. Anticancer Res 40: 393-399, 2020.